まず、『毒舌執事とシンデレラ』4巻発売のお知らせでなくてごめんなさい。『毒舌執事とシンデレラ』シリーズは、現在3巻までで、続きを出すことができない状況です。
私が書きたくなくなったからとか、飽きたからとかではありません。何かトラブルがあったわけでもありません。単純に売り上げがイマイチだったからです。厳しいけれどそれが現実で、ただただ、作者である私の責任です。本当にごめんなさい。
シリーズものは、読者さまから望まれて初めて続きを書けるのであって、続刊の保証なんかどこにもないのです。だから、最悪続きが出せなくてもいいように、大きな伏線の取りこぼしがないように、巻ごとに一応満足はいただけるように……毎回、そう思いながら書いているつもりです。
ただ『毒舌執事とシンデレラ』の場合、重大な謎(月森は何者なのか?)が明かされないままになってしまっているのが、ずっと心残りでした。というのも、正直言って、製作陣は直前まで4巻を出す気満々で動いていたんです。続刊の可否って予想できないんですよ。本当に。
でもまあ結局は、3巻で終わりということになってしまいました。ごめんなさい。誰が悪いわけでもないので、文句を言っても仕方ない。結果は結果として受け止めて、自分ひとりでなんとか乗り越えなければ……と、なんとか気持ちを入れ替えることしかできませんでした。
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そんなこんなで、あっという間に3巻発売から半年以上が経った、先日のこと。『毒舌執事とシンデレラ』のイラストを担当してくださった三月リヒト先生から、久しぶりに連絡がありました。
ちょうど去年の12月ごろ、3巻の作業中だった私たち。クリスマスが近づき、三月先生も『毒舌執事とシンデレラ』のことを思い出してくださったそうです。メッセージには、素敵なイラストが添えられていました。「月森さんに会いたいな」というつぶやきも合わせて。
なんだかもう、ぼろぼろ泣いてしまいました。ありがたすぎて。この作品を大切に思っていたのは、私ひとりではなかったのだなって。
思えば、お手紙や読者カードで、読者のみなさんからたくさんのエールをいただいていました。「続きを待っています」「次の巻が楽しみです」というお声は、たしかに届いていたんです。ひとりではなかったのですよね、最初から。売り上げとしては振るわなかったとしても、どこかで誰かが、たしかにこの物語を愛してくれていた。続きを待ってくれていた。そのことだけは、忘れちゃいけなかったのです。
私も、会いたい。優芽や月森にもう一度会いたい。
その思いが抑えきれず、せめて非公式で続きを書いて、ブログとかで公開してもいいですか、と、担当編集さんに連絡すると、なんと「それなら、青い鳥文庫のサイトに載せませんか」と言ってくださったのです。
え、いいんですか!!!?
驚いた勢いのままキーボードを叩き始め、その日の夜には、短編を書き上げていました。他の原稿の〆切もあるのに何してるんでしょうね。でもそれくらい、ずっと続きが書きたかったんです。担当さんもお忙しい中すぐにチェックしてくれ、三月先生も快くイラスト掲載の許可をくださいました。
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というわけで、1巻からの伏線だった「月森の過去」がわかるエピソードを、公式サイトに掲載していただくことができました。これで読者のみなさまに最低限の礼儀を果たせたかなと、少しだけ肩の荷が降りた気持ちです。どうか楽しんでいただけますように。
打ち切り作の続きを公式サイトに載せていただけるなんて、ふつうありえないことだと思います。今でも信じられないし、本当に嬉しいです。きっかけをくださった三月先生、ご快諾いただいた担当さんには感謝してもしきれません。ありがとうございます!
そして、『毒舌執事とシンデレラ』シリーズを応援してくださった読者のみなさまに、改めて深く深く感謝を。ありがとうございます。本当に本当に、ありがとうございます。
天川は幸せ者です。