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天川栄人のブログです。新刊お知らせや雑記など。

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『おにのまつり』が児童ペン賞を受賞しました

 昨年刊行の『おにのまつり』(講談社)が、第9回児童ペン賞 少年小説賞を受賞しました。本当にありがとうございます! 

http://jidoupen.jp/

f:id:eighttenkawa:20230904103229j:image

 企画段階からたくさんの助言をいただいた担当編集さま、イラストをご担当いただいた中島梨絵先生、美しい装丁に仕立ててくださった大岡喜直(next door design)様、帯にコメントをお寄せくださったあさのあつこ先生、その他この作品の製作に携わっていただいた全ての方に、厚くお礼を申し上げます。

 ふるさとである岡山を舞台にした小説は、かねてからの悲願でもありました。岡山への愛を詰め込んだこの作品が評価されたことは、岡山出身者としてとても誇らしいですし、いつも応援してくださる岡山の読者様や書店さん、司書さんに恩返しができたことが何より嬉しいです。

 もちろん岡山だけではなく、迷い、悲しみ、怒り、葛藤し、心の中に鬼を抱える日本中の子どもたちに、この作品を通して何か一つでも伝えられることがあったなら、これ以上の喜びはありません。

 この作品をお読みくださったすべての読者様に、今一度お礼を申し上げます。いつも本当にありがとうございます。今後もよい作品を書いていけるよう、精進してまいりますので、引き続き応援してくださると嬉しいです。

 なかなか自分に自信が持てず、いつも卑下してしまう私ですが、今日ばかりは胸を張りたいと思います。未読の方、これを機にぜひお読みください。きっと後悔はさせません。

 これからも『おにのまつり』をどうぞよろしくお願いいたします。

bookclub.kodansha.co.jp

8月月報

【お知らせ】

・『虹色のパズル』(文研出版)の紹介記事を山陽新聞に載せていただきました。

www.sanyonews.jpアンドロメダの涙 久閑野高校天文部の、秋と冬』(講談社)9/13ごろ発売です!

www.hanmoto.com

【お仕事】

・カフェイベント『虹色のパズル』ありがとうございました!

eight-tenkawa.hatenablog.com

・改稿もろもろ。

・新作プロット。難航中。

・今年も文芸道場おかやまの散文部門講師を仰せつかっております。
 応募作品の審査を終え、今は来月のワークショップの企画を練ってるところ。去年はストーリーのお勉強だったので、今年はキャラクターづくりのワークショップにしようと思っています。楽しみ!

【観た映画とか読んだ本とか】

『バービー』

 大・傑・作。終始ゲラゲラ笑いつつ号泣してました。
 いや大前提としてコメディなので笑うべきなんですが(この映画を観てしかめつらしちゃった人はいい機会をもらったと思ってフェミニズムを勉強してください)、でも同時に泣けました。冒頭「ヒステリックにならず論理的に語ることのできる」法廷バービーが出てきたあたりで、もう泣いてたんですよ私。ラストなんかもう、なんで泣いてるのかわかんないまま号泣してた。男女カップルがデートで観に行くのはリスキーな気もするが、とにもかくにも傑作なので観てほしい。
 ※ただしラストカットを妊娠と解釈するのは無理筋だと思う。婦人科って妊娠/出産する気がない人でも行くからね。妊産婦だけでなく、ままならない身体を抱えたあらゆる女性*1が「「「人間としての日常」」」をやっていくために行くところだからね。

wwws.warnerbros.co.jp

『マイ・エレメント』

 子どもにはシンプルなロミオとジュリエット型ラブストーリー、大人には移民2世の葛藤……と、多層的に訴えるいい作品だった。エンバーがしんどすぎてつらい。「いい人でいる」ためのリソースすらない階級で、怒ることで自分をギリギリ保ってる感じ。泣くこともできずに。自分がどうして怒ってるのかもわからずに。
 エンバーには絶対に幸せになってほしいが、ウェイドと一緒でほんとに幸せになれるのか、やや心配……。

www.disney.co.jp

『どもる体』伊藤亜紗(医学書院)

 最近伊藤亜紗さんのお仕事をちょっとずつ読んでいる。視覚障害のある方や吃音の方が自分を語るときの言葉って、健常者やふつうに喋れる人の回路では絶対に出てこない豊かな表現があって、(不謹慎かもしれないが)すごく面白い。「しゃべれる方が変」ってまさにそうなんだよな。

www.igaku-shoin.co.jp

【その他】

・夏休みはほぼ寝たきりだった。状況証拠的におそらくコロナ(微熱、咳、鼻水、のどの痛み、倦怠感が3~4日続き、嗅覚・味覚障害が出た。なお発症2日前に会った人が陽性だった)だと思うんだけども、抗原検査キットで陽性が出ず、かといって高熱が出たわけでもないので病院にもかからず、結局なんだったんやとモヤモヤ。今は元気です。

・フォントオタクの人が家に遊びに来た。なにごとも、その道のプロの話は面白い。

・下半期は珍しくイベントが多くなりそうです。いろんな方にご協力いただきながら、色々企画を練っています。次は来月の文芸道場。頑張るぞ。

*1:もちろん女性じゃなくても婦人科に行く人はいる。

カフェイベント『虹色のパズル』

 ライラ・カンパニー様、cafeユークリエイト様のご協力で、8月6日、7日の2日間、名古屋にてカフェイベント『虹色のパズル』が開催されました。
 ショーやトークを通して、ドラァグクイーンを身近に感じられるイベントです。
 私は6日のみの参加でしたが、もう、めちゃくちゃ楽しかったです。

 まずはライラさん、ルミ子さん、こっぴーさんによるショー。ドラァグクイーンのショーといえば、リップシンク(口パク)です。ドラァグクイーンを見たことない人、なんかいかがわしい芸をする人たちだと思ってる人、騙されたと思って一回ショーを観てほしい。本当に本当にかっこいいから!!*1 お衣装も可愛くて最高でした。

クイーンさんたちのショー。驚異のハイヒールを見よ。

 それから、ユークリエイトさんが今回のイベントのために用意してくださった虹色スイーツやドリンクを楽しみながら、クイーンさんたちとお話。

虹色メニュー。チーズケーキ美味しかったです!

 ライラさんがインタビューの時間を設けてくださり、『虹色のパズル』の内容や、気に入っているシーンなどについて、私から来場者の方にお話しました。その場でお買い上げくださったみなさまには、本にサインもしました。ありがとうございます!

 ライラさんは名古屋レインボープライドの代表だけあって、LGBTQ+関連の知識が豊富! プライドフラッグの意味の解説や、LGBTQ+関連書籍の紹介もありました。

関連書籍。ジェンダーがテーマの絵本も。

 そしてみんなでドラァグ体験……は難しくても、クイーンさんたちの視線なら体験できる、ということで、ハイヒールの高さを模した台に乗って記念撮影。

クイーンさんに囲まれるちんちくりんの天川。

 お子さんは絵本やおもちゃで遊び、大人はお酒を飲みつつ楽しくおしゃべりをし……カフェとバーの中間のような感じの雰囲気で、3時間があっという間でした。

 絵本の読み聞かせをされている方がいらしたり、「娘が養護教諭なので保健室に置いてもらいます!」とおっしゃってくださる方も。本当によいご縁をいただいたと、感謝の気持ちでいっぱいです。

 基本的にドラァグクイーンのお仕事は夜がメインですから、昼間からクイーンさんたちと触れ合える機会って、けっこう貴重です。そのおかげか、クイーンさんの登場前からカフェはほぼ満員。作者の私は隅っこでぼうっとしていただけですが*2、クイーンさんたちやカフェスタッフの方のおかげで、とても楽しい時間になりました。
 来場者のみなさんも、人見知りの私に気軽に話しかけてくださって、とても嬉しかったです。ありがとうございます!

番犬ガオガオで遊ぶライラさん。かわいい。

 そして何より、今回、名古屋という場所でイベントを開催していただけたことが、奇跡みたいで嬉しいです。

 というのも、何を隠そう(別に隠してないけど)、『虹色のパズル』の舞台は名古屋市なのです(作中ではN市と表記しています)。

 取材でお世話になったライラさんがいらっしゃる都市だから、というのももちろんあるのですが、もう一つの理由としては、執筆当時(2022年)、名古屋市にパートナーシップ制度がなかったからです。

 多様な市民を抱える大都市でありながら、N(名古屋)市には同性パートナーの権利を擁護する枠組みがありません。そのせいで、作中では、主人公の叔父でゲイの圭一郎と、同性パートナーの真さんとの間に、一悶着起こったりします。

 変わりゆく価値観に制度が追いついていない、過渡期の日本社会の縮図として、名古屋市はちょうどいい舞台だと思ったのです。

(なお、原稿を書き終えた後の2022年12月、名古屋市でもパートナーシップ制度(名古屋市の名称はファミリーシップ制度)が開始されました。作中の描写とはズレてしまいますが、これはもちろん喜ぶべき変化です。私は名古屋市民ではありませんが、このニュースを聞いてとても嬉しかったのをよく覚えています。)

 作者としてはもちろん、できれば時代を超えて長く読まれてほしいです。でも同時に、「こんな本が出るなんて、昔の人は窮屈だったんだね。でも社会は変わったよね」と言われる日が一刻も早く来るといいなと願っています。

お集まりいただいたみなさま、本当にありがとうございました!

 このイベントをきっかけに、ますます『虹色のパズル』の輪が広がっていきますように。改めまして、本当にありがとうございました!

www.shinko-keirin.co.jp

*1:大阪や東京のバーで見たことはあったけれど、真昼間からこんな近距離でクイーンのショーを見られる機会はそうないので、本当に嬉しかったです。

*2:このイベントに関しては、私はマジで何もしてないのです。気がついたらライラカンパニーさんとユークリエイトさんがイベント企画してくれていて、編集さんが本を送って来場者特典のポストカードまで刷ってくれていて、私はその間ぼうっとしてました。この作品は本当に人に恵まれているなと思います。

7月月報

【お知らせ】

『虹色のパズル』(文研出版)発売中です! ぜひ読んで、感想を聞かせてください。試し読みはこちらから↓

www.shinko-keirin.co.jp

・8/6,7に名古屋で『虹色のパズル』のイベントがあります。お近くの方はぜひお越しください!
 
お子様大歓迎、サイン本もあり。完全にライラさんのご厚意なので、何が起こるのか私はよくわかってません笑 来場者特典の素敵なポストカードをぜひもらいに来てください。

www.instagram.com

・クガコー天文部シリーズの後編アンドロメダの涙 久閑野高校天文部の、秋と冬』(講談社)は9/13ごろ発売です! お楽しみに。

www.hanmoto.com

【お仕事】

・新刊宣伝回りもろもろ。
・取材。
・改稿。
・企画つくる→総ボツ→企画つくる。
 下半期はぼちぼち行こうと思います。いのちだいじに。

【読んだ本とか見たドラマとか】

トランスジェンダー入門』周司あきら/高井ゆと里(集英社新書)

 こういう入門書をずっと待っていた。今すぐみんな読んでほしい。
 統計にもよるけど、トランスジェンダーは全人口の1%以下くらいしかいないと言われている。さかんに議論の種になるわりには、トランスジェンダーの実際の姿は、圧倒的に、知られていない。よく知らないから怖くなって、排除しようとする。トランスジェンダーについて何か語りたいなら、せめてまずは知ろうとしてほしい。

 同時に、本を読めば即トランスジェンダーの人たちのことが全てわかるなんて幻想も捨てるべき。現実のトランスジェンダーは一人一人違う人間で、トランスジェンダーの中にもグラデーションがある。それはトランスじゃない人も同じこと。当たり前のこと。

www.shueisha.co.jp

監獄のお姫さま

 体質的にクドカン脚本は合う合わないの差が激しく、ついていけずに途中離脱することがままあるんだけど、これはすごく面白かった。
 罰される女、謝らない男、奪われる子ども、戻らない時間……突飛な設定なのに、経験というか実感としてみんなが共有している感覚がリアルだった。各々のトラウマパートで加害男性を全員伊勢谷友介が演じているのがグロテスクでしたね。

www.tbs.co.jp

「恋神(この恋は幻なんかじゃないはず、だって私は生きているから、神様ありがとう)」のオフィシャルサイトあるんかい。

www.tbs.co.jp

【その他】

・つらいニュースがあって、ものすごく落ち込んでしまい、その上ねん挫した。心身ともにダメダメになって、3日ほど寝込む。そんなこともあります。

・今年に入ってから、ALLYだと公言するようにしている。ALLYって言うだけなら簡単だけど、それでも覚悟が要った。さっきの言い方はまずかったなと反省することはしょっちゅうある。ヘイターに絡まれることもある。でも当事者のしんどさに比べれば笑っちゃうくらいしょうもないことだ。
 ALLYは黙って去ることができても、当事者は降りられない。
 だから私はここにいる。一緒にいる。創作のネタにして終わらせるつもりはない。失敗しながらも、この先もずっとALLYでいる。
 でもALLYっていったい何なのさ。自分に何ができるのかわからないよ。せめて今は、マジョリティ特権を振りかざして声高に何かを語るよりも、周りの騒音でかきけされがちな小さな声に耳を澄ますことを、真摯にやりたいと思っている。

・なんてこと言いつつ、ふだんはのん気にプリキュアのこととか今週のジャンプのこととかポンコツエストのこととかを考えてるんで大丈夫です(最近しんどそうだと友達に心配された)。

・また岡山に帰った。倉敷美観地区を浴衣で歩いたりしました。いつか美観地区のお話も書きたいな。

Twitterがしんどい。移住先を本格的に探さないと……みなさんマジでどうしますか……?

6月月報

【お知らせ】

・新作YA『虹色のパズル』(文研出版)発売中です! 詳しくはこちら↓

eight-tenkawa.hatenablog.com

  取材でお世話になったドラァグクイーンのライラ・グレイルさんがラジオで紹介してくださいました! ありがとうございます。

・昨年刊行した『おにのまつり』(講談社)が、第56回夏休みの本(緑陰図書)に選ばれました!
https://www.j-sla.or.jp/pdfs/natsuyasuminohon56.pdf
 全国学図書館協議会様選定の、夏休みの間に読書に親しみ、多くの読書をすすめるための図書リストです。こういうのに選んでいただくのは初めてなので、本当に本当に嬉しい;;光栄です。ありがとうございます!
 学校図書館さんに推していただけるのは、作家としてとても自信になります。この夏、たくさん読んでいただけますように。まだ読んだことない方はこの機会にぜひ↓

eight-tenkawa.hatenablog.com

【お仕事】

・取材。今回も素敵なお話を聞かせていただきました。頑張るぞい。

・改稿。ようやく光が見えてきた。

毎日新聞さんの校閲力講座・入門編を受講しました。とても勉強になるのでおすすめ。

salon.mainichi-kotoba.jp

【読んだ本とか観た映画とか】

 今月はたくさん映画を観ました。

『怪物』
 これをハッピーエンドだなんて、とても思えない。だってラストこれ、『銀河鉄道の夜』じゃないの? けっこうダメージ大きかったです。*1
 あとどうでもいいことだけど、書籍の誤植を発見するのが趣味の人物が出てきてキモ怖かった。誤字脱字には気をつけよう。

gaga.ne.jp『ウーマン・トーキング 私たちの選択』
 性被害に遭った女性たちが、相手を「赦す」か「闘う」か、それとも「去る」か、ひたすら、ひたすら話し合う映画。彼女たちは敬虔(かつ、かなりラディカル)なキリスト教の信徒なのだけど、非暴力/平和主義という信仰と、痛みや怒り、復讐心、そして自らの尊厳との間で、揺れに揺れる。張りつめた緊張の糸が今にもプツンと切れてしまいそうなギリギリの状態の中、それでもあくまで対話の積み重ねによって負の連鎖を断ち切ろうとする姿が、しんどくもまぶしい。つらいけどいい映画でした。おすすめ。

womentalking-movie.jp『Aftersun』
 11歳のソフィが若い父親とふたりきりで過ごした夏休みを、20年後、父と同じ年齢になった彼女が思い返す。キラキラの思い出補正の隙間に、ところどころ落ちる影。その辺に丁寧な説明はなく、親切な映画とはいえないけど、その分いろいろ考えちゃった。

happinet-phantom.com『リトル・マーメイド』
 そりゃツッコミどころはあったけど*2基本的にはアニメ版に忠実で音楽も最高で、なによりアリエルが超可愛かったので満足です。パートオブユアワールド、素晴らしかったな。カリンバ練習しよう。

www.disney.co.jp『リバー、流れないでよ』
 京都貴船を舞台にした、たった2分間のタイムリープもの。さすがはヨーロッパ企画って感じのトリッキーなストーリーで超面白かった。
 劇場で観客みんながゲラゲラ笑って、ハラハラして、「そういうことか!」と膝を打つ一体感、最高に楽しかったです。

www.europe-kikaku.comトランスジェンダー問題』ショーン・フェイ著、高井ゆと里訳(明石書店
 
もうかれこれ数か月かけて少しずつ読み進めているのだけど、内容も量もみっちりで、かなりタフ。でも読めば読むほど、これは大事な本だ……! と思うので、少しずつでも読んでいこうと思う。当事者不在の不毛な議論をしないために。

www.akashi.co.jp『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』椰月美智子(小峰書店
 私も小さいころ、母の知り合いのおじいさんと文通したり、通学路で一緒になる知らないおばあさんと毎日話したりしたものだけど、だんだん疎遠になっていった。子どもの成長は、いつだってちょっと切ない。どうか、おれと田中さんの友情が終わりませんように。

www.komineshoten.co.jp

【その他】

・Happy Pride Month! ひどいニュースが多くて実際はなんもHappyじゃないけど、生きていきましょうね。

・上半期お疲れさまでした。お世話になった方、新刊を読んでくださった方、本当にありがとうございます! 少々疲れ気味なので、下半期はちょっとペース緩めたいです。いのちだいじに。

*1:クィア・パルム賞を取ったことで話題ですが、私なら当事者の人にはこの映画は勧めない。

*2:人種のこととやかく言うなら、エリック王子が住まうこの謎の国のこともとやかく言ってくれよ! いったいどこの植民地なんだよ! どういう文化圏なんだよ!

【6/22発売】『虹色のパズル』

 数学ガール×ドラァグクイーンのYA『虹色のパズル』(文研出版)6/22発売です!
 表紙イラストはトミイマサコさん、LGBTQ+表現監修はNPO法人ReBit様。
 ドラァグクイーン、レインボーフラッグ、リケジョ、ルービックキューブ、テセレーション(敷き詰め模様)……どれか一つでもひっかかった人は、ぜひお読みください。

【あらすじ】

 普通であろうと感情や個性を押し殺して辛い日々を過ごす琴子。
 夏休みに一緒に暮らすことになった叔父の圭一郎は、ゲイであることを隠さない自由奔放なドラァグクイーンだった!
 人づきあいが苦手な数学ガールと我が道を行くクイーンの、カラフルでマジカルな夏休み。

   *

 誰かが誰かにプロポーズする瞬間を、目の前で見たことはありますか。
 私はあります。6年前、オーストラリアのシドニーで。

 短期の語学研修で1か月弱シドニーに滞在していた時のこと。ちょうど、LGBTQ+の祭典・マルディグラのパレードがありました。LGBTQ+当事者やその家族、ALLY、企業や自治体、学校などがそれぞれのフロートを出し、練り歩くものです。
 雨上がりの繁華街、私は友達と一緒に、ほぼ最前列に陣取って、レインボーフラッグを振ったり、ドラァグクイーンとハイタッチしたりしながら、きらびやかなパレードを見ていました。

マルディグラのパレードの様子。

 すると、あるとき。
 パレード参加者の男性が、ちょうど私たちの前で突然ひざまずきました。そして、一緒に隣を歩いていた男性に、指輪を見せ、おごそかに結婚を申し込んだのです。答えはYes。二人は抱き合い、猛烈にキスを交わし、周りからは割れんばかりの拍手がわきました。
 それは本当に本当に、本当に幸せな光景でした。

 家に帰った後、私はホストマザーにそのことを報告しました。興奮冷めやらず、勢いのまま「びっくりした。日本にはゲイってあんまりいないから」と言った私を、ホストマザーは優しくたしなめました。「それは違う。日本にもゲイはたくさんいるよ。隠れていて、見えないだけ」と。「日本はもっとオープンになるべき」とも。

 私はそのとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。

 私はそれまで、自分はLGBTQ+に差別なんてしないと思っていました。本気でそう思っていたのです。でも全然わかっていなかった。現に存在する人たちを無視し、まるで透明人間か空想上の生き物みたいに扱うことを、差別と言わずしてなんと言うのでしょう。世界の色が変わったような気がしました。

 隠れていて、見えないだけ。見えないのと、いないのは、違う。

『虹色のパズル』について、語りたいことはたくさんあるのだけれど、今はひとまずこのエピソードで十分かなという気がします。

   *

 6/22ごろ発売です! どうぞよろしくお願いいたします。

www.shinko-keirin.co.jp

5月月報

【お知らせ】

『セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏』講談社)発売中です!

eight-tenkawa.hatenablog.com

【お仕事】

・原稿1。

・原稿2。はちゃめちゃに手こずっている。

・ゲラ。

・その他もろもろ。

【見たドラマとか観た映画とか】

・「ブラッシュアップライフ」

 ドラマ通の友人に「金払ってでも見ろ」と言われてたのでGWにHuluで一気見したのですが、本当に素晴らしかったです。年代がドンピシャなので懐かしい小ネタがいちいち刺さった。シール交換ね……したよね……。
 なんてことないあるある会話やどうしようもない日常が、何度も何度も繰り返されるうちに、だんだんとかけがえのない記憶に思えてくる。見終わった後、一つ一つの人生が心から愛おしくなるような物語でした。お仕事ものとしても優秀。金払ってでも見てくれ。

www.ntv.co.jp

・『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

 大学時代、映画論の授業で教授が「ディズニーにやれないことをやるのがイルミネーションというスタジオです」と言っていて、深く納得した記憶がある。「怪盗グルー」シリーズや「ペット」など、ツッコミどころは200か所くらいあるけど、ただただギャグがバカバカしく、ただただキャラが可愛い。特に感動とかはないけど別によくね? 面白ければそれで十分じゃん? という潔さがイルミネーションのすごいところです。
 この映画もまさに期待通りで、これだけの材料があれば、教訓を垂れたり社会的イシューを取り入れたりしつつ号泣必至の一大感動巨編にも仕立てられる(ディズニーならそうする)ところ、そうはせず、徹頭徹尾「おれたちの知ってるマリオ」をたたみかけてくるのが本当にすごかった。「このキャラ懐かしい」「この音楽あのステージのやつだ」「このゲーム近所のお兄ちゃんとやったな」……観た後、みんなでこんな風に語り合えたら、マリオの映画化としては100点満点でしょ。

www.nintendo.co.jp

【その他】

・京都春の古書即売会に行きました。京都の古本市といえば糺の森の納涼古本まつり*1が有名だけど、春もやってるんですね。

kyoto-koshoken.com 今回の掘り出し物は昔の教科書。めっちゃ面白い! 書き込みも味があるのだ。

自然科学系の教科書を縦書きで読むの新鮮。

ダチヨーノ卵ハ甚ダ大クシテ米一斗モ入ル位アリト云フ。

ドラえもん映画完走しました。どなたかドラ映画を語る会をしませんか。

eight-tenkawa.hatenablog.com

・最近飼い猫が首輪を外す技を覚え、何度つけ直しても勝手に外してしまう。困った。

*1:夜は短し歩けよ乙女』を読んでください。