数学ガール×ドラァグクイーンのYA『虹色のパズル』(文研出版)6/22発売です!
表紙イラストはトミイマサコさん、LGBTQ+表現監修はNPO法人ReBit様。
ドラァグクイーン、レインボーフラッグ、リケジョ、ルービックキューブ、テセレーション(敷き詰め模様)……どれか一つでもひっかかった人は、ぜひお読みください。
【あらすじ】
普通であろうと感情や個性を押し殺して辛い日々を過ごす琴子。
夏休みに一緒に暮らすことになった叔父の圭一郎は、ゲイであることを隠さない自由奔放なドラァグクイーンだった!
人づきあいが苦手な数学ガールと我が道を行くクイーンの、カラフルでマジカルな夏休み。
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誰かが誰かにプロポーズする瞬間を、目の前で見たことはありますか。
私はあります。6年前、オーストラリアのシドニーで。
短期の語学研修で1か月弱シドニーに滞在していた時のこと。ちょうど、LGBTQ+の祭典・マルディグラのパレードがありました。LGBTQ+当事者やその家族、ALLY、企業や自治体、学校などがそれぞれのフロートを出し、練り歩くものです。
雨上がりの繁華街、私は友達と一緒に、ほぼ最前列に陣取って、レインボーフラッグを振ったり、ドラァグクイーンとハイタッチしたりしながら、きらびやかなパレードを見ていました。
すると、あるとき。
パレード参加者の男性が、ちょうど私たちの前で突然ひざまずきました。そして、一緒に隣を歩いていた男性に、指輪を見せ、おごそかに結婚を申し込んだのです。答えはYes。二人は抱き合い、猛烈にキスを交わし、周りからは割れんばかりの拍手がわきました。
それは本当に本当に、本当に幸せな光景でした。
家に帰った後、私はホストマザーにそのことを報告しました。興奮冷めやらず、勢いのまま「びっくりした。日本にはゲイってあんまりいないから」と言った私を、ホストマザーは優しくたしなめました。「それは違う。日本にもゲイはたくさんいるよ。隠れていて、見えないだけ」と。「日本はもっとオープンになるべき」とも。
私はそのとき、雷に打たれたような衝撃を受けました。
私はそれまで、自分はLGBTQ+に差別なんてしないと思っていました。本気でそう思っていたのです。でも全然わかっていなかった。現に存在する人たちを無視し、まるで透明人間か空想上の生き物みたいに扱うことを、差別と言わずしてなんと言うのでしょう。世界の色が変わったような気がしました。
隠れていて、見えないだけ。見えないのと、いないのは、違う。
『虹色のパズル』について、語りたいことはたくさんあるのだけれど、今はひとまずこのエピソードで十分かなという気がします。
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6/22ごろ発売です! どうぞよろしくお願いいたします。