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天川栄人のブログです。新刊お知らせや雑記など。

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書き手のためのジェンダー勉強会サロン

 日本児童文芸家協会のサロンにて、「書き手のためのジェンダー勉強会サロン」を主催しました。たくさんのご参加、ありがとうございました!

 成蹊大学の今田絵里香教授をお招きし、ジェンダーバイアスやLGBTQ+についての基礎知識を確認した後、後半は具体的に創作の中での表現について検討しました。

 今田先生には準備段階から多大なるご協力をいただきました。おかげさまで、とても充実した内容になったと思っています。途中バタバタしたり、大幅に時間を延長してしまったりしましたが、なんとか無事に終わってホッとしています。ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。

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 当日は時間がなくて、そもそもこのサロンをどうして開いたのか説明できなかったので、少しだけ。

『虹色のパズル』(文研出版)を書いたとき、NPO法人ReBitさんに表現監修に入っていただきました。私はこれがすごくよかったと思っています。

 LGBTQ+をメインテーマにしようと決めたときから、責任をもって書こうと強く思っていましたし、本や映像等の資料で手あたり次第に調べ、セミナーや講座に参加し、ドラァグクイーンさんに取材に行き、当事者の方に完成原稿も読んでもらっていたので、ある程度はクリアしているだろうと自分では思っていたんです。

 でも、監修の方から返ってきたのは、20を超える指摘と修正。それこそサロンでお送りした資料のような、「日本語としては間違ってないけど、差別や偏見につながる恐れがあるよ」という指摘の嵐だったんです。

 ものすごく反省しましたし、意識しているつもりで書いてもこれなんだから、ふだんの文章は偏見まみれなのでは……と空恐ろしくなりました。そして同時に、これってみんなもやりがちな失敗なのでは? 自分だけじゃなく、みんなと共有したほうがいいのでは? とも思いました。自分の作品だけよくなればそれでOK、という話ではないと思ったんです。

 というのも、当事者の方とお話すると、小さなころからフィクションの中に自分の居場所はなかったっておっしゃる方がすごく多いです。自分を投影できるキャラクターがなかなか見つからなかったって。児童書作家として、そんな悲しいことはないです。

 というわけで、ジェンダーに関心のある作家が集まっていろいろ話せる会をやりたいんですが……とサロン委員会の先生方にご提案してみたところ、それならまずは講義形式で基礎知識をみんなで共有したほうがいいね、という話になり、今回のサロンになりました。私でいいんだろうかと6億回くらい思いましたが、言い出してしまったものは仕方ないので、自分でも今一度勉強し直しながら、誠心誠意準備してきたつもりです。

 サロンの中で、もしかしたら責められたように感じたり、反発を覚えたりした方がいるかもしれません。私の言葉足らずで嫌な思いをさせてしまったらすみません。お前は何様やねんと思われたかもしれない。ほんとそうですよね。でも、誰かがやらなきゃいけないって思ったんです。

 もちろん、完璧な表現なんてありません。どんなに頑張ったって、全員に満足してもらうことはたぶんできない。それを承知の上で、それでもよりよい表現を模索するのが、作家の仕事だと考えています。

 差別は誰だってします。だから、失敗に気づくたびに反省して変えていけばいいと思います。偏見のない人間になろうとするよりも、自分には偏見があると常に自覚しておく方がきっと大事です。

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 ところで出たばかりの『恋愛文庫』、天川の短編「魔法使いとキャンディボンボン」は、某キャラクターの恋の相手が同性か異性か断定できないように書いてあります。私は私にできることを、小さなことからコツコツと。